2021/01/29 投稿

職場におけるコロナウイルス対策(2021年初頭版)

常勤でない場合、産業医はたいてい月に一度しか会社に来ません。
僕の場合24時間対応していますから何か次回の来社までに対応が必要な事態が生じると、メールや電話等で連絡を受けて必要なら臨時で現場に赴いて対応します。

僕が受け持っている企業で2020年1年間の緊急対応件数を調べてみたところ一番多かったのは新型コロナ関係でした。
発熱している方がいるのだがPCR陰性だった、出社させていいのか、とか、職場のコロナ対策はどうすればいいのか、などです。

2020年の東京都の統計ではクラスタが起こった場所で最も多いのは実は職場です。
ですから職場での感染を防ぐのは非常に重要になってきます。
一応現時点での私見をまじえ、職場におけるコロナ対策を述べておきます。

 

まずは、産業衛生学会と日本渡航医学会が共同で出しているガイドラインを読みましょう

日本産業衛生学会 – 新型コロナウイルス感染症情報

このページに載っています。
この原稿を書いている時点での最新版は2010年12月15日付の第4版です。

さていくつか僕が産業医として会社や従業員にアドバイスしているのは以下の点です。

1.従業員は常に「自分がすでに新型コロナにかかっていて他人にうつすかもしれない」と思って行動しましょう。

他人に感染させたときに約半数の人は全くの無症状だったという報告もあります。
症状のない人からこの病気はうつるのです。
またこの感染症にかかって症状が出たときも熱が出る人は半分くらいしかいません、あとは軽いのどの痛みや、倦怠感などいわゆる”風邪っぽい”くらいの症状です。
特に若い人には症状が軽い人が多いようです。

2.マスクをしましょう。

好きなマスクで構いません。
人によっては素材でかぶれることがありますので自分にあったものを選びましょう。
ポイントは鼻の穴まできちんと隠れるようにマスクをすることです

3.マスクを外しているときはしゃべらないようにしましょう。

マスクなしでしゃべる場合は他人と十分な距離(2メートル以上)を取りましょう。
特に気を付けなくてはいけないのはランチです。
きつい仕事の合間におけるランチは重要な息抜きでもあるのでみんなで楽しくおしゃべりをしながら食べたくなるのもわかります。
理想的には個人個人での食事(病院などでは義務付けているところがあります)、そうでなければ食べ終わった後に雑談みたいなのがおすすめだとは思います。
それ以外に気を付けなければいけない場所としては、マスクを取る場所すなわち、更衣室、休憩室、喫煙所、化粧を直すためのトイレなどです。

4.手洗いをしましょう。

一番いいのは石鹸と水で洗うことですが時間もかかるのでしょっちゅう洗うわけにはいきません。
会社のあちこちにアルコール消毒液をおいて消毒するのがおすすめです。
ポイントはつま先と親指をきちんと消毒することです。
ウイルスは手にくっついたくらいでは移りません。
ただその手で自分の鼻や口を触ったり食べ物を手づかみで取って食べたりするとそこから口の中に入って移ります。
その時に一番使うのは指先なのですがここの消毒がおろそかになっている人は非常に多いです。
具体的な洗い方・消毒の仕方についてはネットを見るといろんなところに書いてありますから是非他人に教えられるようになるくらいまでマスターしてください。

 

一方会社全体として取り組むことを勧めているのは次の点です

5.風邪症状がある人は休むか、テレワークができる体制を整えましょう。

先ほど述べたように非常に軽い症状でも実は新型コロナであるということもあります。
土曜日に熱が出たけど月曜の朝には解熱したので出社して、そこから他人にうつしたという例も実際あります。
もちろん職種によってはテレワークができない職種もあり難しいのですが、できるだけ休めるような体制づくりを考えましょう。
ちなみに前述のガイドラインでは、発症して8日、症状がなくなって3日たつまで出社しないことを勧めています

6.PCRを過信しないようにしましょう。

例えば上の例でPCR検査に行って陰性だったのでもう大丈夫と思って出社したとします。
PCRは症状がある人でも30パーセントは見逃しますのでやはり他人にうつす危険はあります

7.密になる空間や、風通しの悪い空間が会社の中にどこにあるかを探しましょう。

一番のおすすめは市販の二酸化炭素濃度計を使うことです。
会社の中で意外なところ、例えば部屋の隅などで二酸化炭素濃度が高いことがあります。
そこは危険な空間と考えていいでしょう。
何らかのやり方で風通しを良くするか、複数で立ち入らないようにしましょう。

8.会食を伴う接待等はよく考えましょう。

会社の仕事をしているとどうしても実際に会っての商談や会食を伴う接待が必要な時はあります。
しかしその場合でも、なるべく少人数で、十分な広さを取るか風通しの良いところで行いましょう。
1.で述べたように、自分に症状がなくても取引先にうつすことがあります。
特にこの病気は年齢が高いほど重症化しやすく、さらには企業のトップなど年齢が高いほどひざ詰めの談判をしなければならない機会も多いので、現在の流行の状況やその商談の重要さ等も考えて、場合によってはTV会議などを使った方法も考慮に入れましょう

 

その他会議の仕方や設備の消毒、部屋のレイアウトなど色々とアドバイスする点はあるのですが最低でもこのくらいは頭に入れておきましょう。

2020年の年末に非常に効果の高いワクチンが複数の会社から出ました。
欧米ではすでに接種が始まっています。
このワクチンが期待通りの効果を発してくれるようであれば来年の年初は今とは全く違った明るい光景が我々の目の前に見えているはずです。
そこまでもう少しの辛抱かと思っています

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