2021/06/03 投稿

職場における新型コロナワクチン接種の注意点

新型コロナワクチンの接種に関して、接種速度をさらに上げるべく2021年6月1日付で職場での接種を6月半ば過ぎから行えるという事務連絡が厚生労働省より発出されました。

この6月1日にある「事務連絡令和3年6月1日新型コロナワクチンの職域接種の開始について」です。

この情報は6月1日時点の情報をもとに書いております
今後通知等が次々と発出され具体的な方策に関しては色々な情報が錯綜していくと思います。
今の段階での懸念点等をまとめてみました。

まだ全然わかっていないのは、

  1. どういった企業が打てるのか。
    例えば希望で手を挙げればワクチンを回してくれるのか、それとも医師や看護師等をすべて自前でまかなえる大企業に限るのか、公共交通機関など公共性の高い業種が優先なのか。
  2. 中小企業などは商工会議所を通じてうつことも可能となっているがどのような手続きを踏むのか
  3. 誰が打てるのか。
    これも新聞等により少しニュアンスが違います。
    従業員だけなのか、従業員の家族も打てるのか、あるいは会社の近所に住んでいる方も打てるのか。

わからないことが多いながらも半ば予想をまじえて今の段階から用意する場合の注意点を書いておきます。

まず、職場や健康保険組合に診療所(クリニック)が併設されている場合です。
この場合はクリニックを最大限に生かして接種計画を立てます。

注意点としては以下の10点です。

1.自治体や個別接種などで1回目のワクチンを打った人は2回目を職場で打つことができません
というのも、自治体・個別接種ではファイザー社のワクチンを利用していますが、職場で使用するワクチンはモデルナ社のものだからです。
1回目にファイザーワクチンを打ったら、2回目も必ずファイザーワクチンを打たなければなりません。
さらに言うと自治体・個別接種の1回目を予約している人は、地域で打つのか職場で打つのかを決めて片方はキャンセルしてください(より多くの人にワクチンを届けるためです)。
なお、ファイザー、モデルナともに2回打つのですが、1回目と2回目の間の間隔がファイザーは3週間、モデルナは4週間必要です。
そこまで考えて接種予定を組むこと。

 

2.接種会場では人員の整理などで結構人手がいります
イメージとしては医師1名、看護師2名であれば案内する人が3名は必要でこれが最小限の体制と思われます。
また実際の人の流れなどはあらかじめ練習をしておかないと本番で混乱が生じます。

 

3.ごくまれにアナフィラキシーといって、注射直後に急に具合が悪くなり、放置しておくと命にかかわる事態が生じます。
その場合の処置を考えると医師1、看護師2は最小限の体制と思ってください。
可能であれば医師が2人は欲しいところです。

 

4.会場は密にならないようにし、接種会場での私語を厳禁とすること。
職場ですからどうしてもお互い顔見知りで仕事関係の会話がしたくなります。
特に注射前に並んでいるときや、注射後15分間、具合が悪くならないかどうか経過を見ているときがリスキーです。
会話によってマイクロ飛沫の飛散などが起きて社内感染の原因になりかねません。

 

5.だれを接種の対象者にするか考えること。
報道によれば、従業員の家族や地域の住民もその対象にすることも厚生労働省は考えているようです。
この辺りは臨時の衛生委員会を開いてでもコンセンサスを取ったほうがいいと思われます。

 

6.1時間あたり打てる人数ですが、自治体の集団接種では15人から20人程度です。
ただ僕が実際打った感じでは、やり方次第では50人から100人程度は打てます

 

7.打たないことを希望する人に接種を強制しないこと。
誰が打ったかに関しての秘密保持を守ること。
これらのデータは会社がある程度保管しておく必要はあると思いますが、無言の圧力をかけたり、上司がそのデータを見て打つよう個別に強制するようなことは許されないと考えています。
あくまでワクチンは本人の自由な意志によって打つものです。

 

8.1日で部署全員を打たないこと。
1回目の接種後はまだ副反応は少なめですが、2回目の接種後は3割くらいの人に仕事ができない程度のだるさや熱といった症状が出ます。
ほとんどは1日で、長くても数日でおさまるのですが、一度に3割の人が休むと仕事が回らなくなる部署も多いと思います。
少なくとも2回目の接種は複数日にわけて行うようにしましょう。

 

9.余ったワクチンについてどうするかを考えましょう。
モデルナのワクチンは1つのボトル(専門用語ではバイアル)から10回分のワクチンが取れます。
1回ボトルに針を刺してしまうとそのボトルごと6時間以内に廃棄しなければいけません。
どうしても余りが出るのですが、なるべく廃棄しなくて済むように、誰かが打てるようにあらかじめ手筈を整えておくことが望ましいです。
ただこの場合も「1回目を接種して2週間目だけど打っとくか」みたいな打ち方はしないでください。
例えば可能であれば、従業員の家族やまだファイザーを打っていない近所の住民数名に声をかけておいて余ったらそこで打てるようにしておく手などが考えられます。
繰り返しになりますが、モデルナワクチンの1回目と2回目の間は必ず4週間あけてください
ちなみに打つ間隔は4週間きっかりでないといけないというものではなく、1~2週間伸びてもかまいません。
ただ2回打つことは予防のためには絶対必要です。

 

10.既に新型コロナに罹患した方も、1回は接種しておくことが推奨されています。

 

さて次に社内に診療所がない場合です。

ほとんどの企業がこのタイプです。
この場合でも、産業医・産業保健職がいる事業所はその資源を最大に生かし、産業医・産業保健職を通じて外部機関と共同で計画を立てることが考えられます。
産業医などがいない場合は、人事や労務の担当部門が外部の医療機関に委託することになります。
同じビルにある複数の企業で委託することも可能ですし、商工会議所を通じての接種などもさらに具体化していきそうです。
ただいずれにせよ、誰に打つかとか日程をどうするかとかそのあたりについては産業医や産業保健職まかせにするのではなく、企業の主体的な取り組みが求められると考えております。
なお、こちらの場合も実際の接種に関する注意事項は先に挙げた10点です。

現在のところワクチン入手に関する具体的な方法などはまだ通知されていませんが、おそらく今後の各種の通知や事務連絡は冒頭にあげたページか特設のページで次々更新されていくはずですので、保健担当者や人事担当者等はきちんとチェックしておくことが重要だと思います。

 

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