2020/12/11 投稿

衛生管理者こそが従業員の健康を守る最前線である

産業医を選任しなければいけない職場は、常時50人以上を雇っている職場です。

この人数になると他に「衛生委員会(又は安全衛生委員会)」の設置と「衛生管理者」を選ばなければいけません。
衛生管理者になるためにはそのための国家資格を取る必要があります。
衛生管理者の資格は第一種(主に工場など)と第二種(主にオフィスなど)と二種類あり試験の難しさもずいぶん違い前者が圧倒的に難しいです。

さて、では衛生管理者は何をすればいいのでしょうか?
現状とりあえず誰か資格を持った人を選んで役所に届けているだけというところが多いと思います。

しかし実は衛生管理者こそが職場で従業員の健康を守るキーパーソンなのです。

 

労働安全衛生法(安衛法)と労働安全衛生法施行規則(安衞則)を見てみましょう。
安衛法10条、12条、安衛則3条の2を紐解けば衛生管理者が行うべき業務は以下の通りです。

一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。

二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。

三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。

四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

五 安全衛生に関する方針の表明に関すること。

六 建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、措置を講ずること。

七 省令によって定められた危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。

八 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。

思った以上に、極めて多分野の衛生に係る技術的事項を管理しなければなりません。

しかも、会社は衛生に関する措置をなし得る”権限”を衛生管理者に与えなければならないのです。(安衛則十一条)

法律用語がずいぶん並びました。
少し例を挙げましょう

例1.例えば徹夜続きでどうみても疲れ果てている従業員がいるとします。
その場合衛生管理者は衛生管理者としての権限でもって、その従業員を帰宅させ、また上司には帰宅を認めさせられます。
例え本人や上司がもう少しやらしてほしいと言ったとしても。
衛生管理者として職場に選任されているものの権限として指示します」くらいなことを言うのもありだと思います。

例2.コロナ禍の現状、例えば非常に密な空間で皆が仕事していたり、マスクを外してしゃべりながら仕事していたりとすると、衛生管理者はもっと間をあけて仕事しろ、しゃべるならマスクをつけろとその人たちに言う権限があるのです。

 

これこそ、会社の一員であり、会社内部の仕事にも詳しい衛生管理者にしかできないことです。
繰り返しになりますが衛生管理者こそが従業員の健康を守るために最前線に立つ人材なのです。
そして会社は衛生管理者にそういった措置をなす権限を与えなければいけないことが法令で定められているのです。

これでもまだ抽象的ですよね。

衛生管理者が持つべき権限、会社が衛生管理者に与えるべき権限はもう少し明確化されています。
(昭和四七年九月一八日。基発第六〇一号の一)

イ 健康に異常のある者の発見および処置

ロ 作業環境の衛生上の調査

ハ 作業条件、施設等の衛生上の改善

ニ 労働衛生保護具、救急用具等の点検および整備

ホ 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項

ヘ 労働者の負傷および疾病、それによる死亡、欠勤および移動に関する統計の作成

ト その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における衛生に関し必要な措置

チ その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備

です。
これらのことをするために衛生管理者は最低でも週1回職場を巡視する義務があるのです(安衛則第十一条)。

衛生管理者の資格を得るための試験には、一部医学的なことも含まれています。
ですが、もっと専門的な医学的知見については産業医の出番です。
衛生管理者はいつでも産業医に聞いてください。
産業医によっては定期訪問時以外に聞かれるのを嫌がる先生もいるでしょう。
しかしそこで引っ込んでいては皆さんの同僚でもある従業員の健康は守れません。

衛生管理者に選任された皆様は粘り強く、これらのことを着実にやっていきましょう。
もちろん我々産業医も力になります。
そして会社は業務を行う権限と時間を彼らに与えてください。
これらをきちんとやると相当労力が必要です。
もともとの部署の仕事の量もできれば減らしてあげてください。
そして皆様の会社の従業員が皆健康に働けるようになることを祈っております。

 

<参考>

 

 

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