2018/10/21 投稿

精神科産業医

私のメインの仕事が産業医であると言うと、産業医って内科ですか、外科ですかという声をよく聞きます。
また最近会社にメンタル不調者が多いから精神科医である産業医が欲しいという声も聞かれます。

残念ながらこれらの方々は産業医というものを正確に理解しているとは言えません。

産業医は内科医でも外科医でもなく、「働く人」の専門家で、「病気」の専門家ではありません。

つまりその人が病気であろうとなかろうときちんと働けるかどうか、またはどのような条件を整えると働けるかを探っていくのが仕事です。

メンタルに問題のある方であれば、負担の少ない仕事やフォロー体制を作る、身体のまひのある人であれば出社からの会社内での動線を確認して障害となることがないかを調べて改善する、などです。

もちろんある程度の病気の知識は必要ですし、もともとある特定の科から産業医に転身した方も多いので(例えば私はもともと内科医をメインにやっていた時期があります)、その科のことはある程度理解できるといったことはあります。
ただ実際問題上その経験が役立つことはあまりありません。
というのも疾患の治療や今後の見通しなどは細かい検査等をやっている主治医が一番よくわかっているからです。
一方逆にどういう仕事であるか、どのようなルートで出社しているか、会社にどのような問題があるかなどはほとんどの主治医には興味がありません。
そこを上手につないで仕事と労働者をマッチさせること、それこそが産業医の醍醐味です

逆に知識や経験が邪魔をすることすらあります。
例えば、精神科もやっている産業医が会社に入っているケースの場合などです。
メンタルを病んでいる人の治療は主治医が、そしてその人がうまく働けるあるいは再発を防ぐための職場環境の調整が産業医の仕事です。
しかしかえって知識があるためにその産業医がもう一人の主治医となって職場でも治療を初めてしますというケースをきわめて多く見かけます。
船頭多くして船山に登るのたとえもある通りこの形になってしまうとなかなか労働者がうまく働けるようにはなりません。

もちろん中には主治医と産業医の立場の違いを分かっていて、メンタル疾患を持つ従業員が働ける環境を主治医と協力して作り上げることのできる精神科の産業医さんも数多くいらっしゃいます。
ただ私が見ている限り、そういった方々はどこかできちんと産業医の仕事に関して体系的な勉強をされた方が多いと思います。

どうしても精神科の産業医が欲しいという場合はぜひ、そのあたりのことすなわち精神科以外の産業医一般の職務についての理解を確かめたうえで雇われることをお勧めします。

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