2021/03/11 投稿

従業員の不妊治療への理解

1978年はじめて体外受精の技術を用いて子供が生まれました。

当時「試験管ベイビー」と呼ばれ大きく新聞に載ったのを覚えている方も多くいらっしゃると思います。
その後不妊治療は大きく進歩しました。
それと同時に利用する方も増加しています。
近年は晩婚化が進むと同時に働く女性が大きく増えています。
女性が妊娠する力(妊孕力)は30歳から下がり始め、35歳を超えるとさらに加速していきます。
このことは特に社会人として成長しようという年齢と妊娠に最も適した時期が重なっていることを意味します。
働く女性はおおきな選択を迫られ最終的に不妊治療にたどり着く方が増えているのです。

現在夫婦の5.5人に1組は不妊の検査又は治療を受けており、だいたい新生児の16人の1人がなんらかの生殖補助医療の力を得て生まれてきています。

不妊治療と就労の両立については厚生労働省も力を入れているところです。

仕事と不妊治療の両立について|厚生労働省

厚労省は「働きながら不妊治療を受けている従業員に対するご理解のお願い」を強く訴えています。
この中では、不妊治療を受けていることを職場にオープンにしている人は4割に過ぎず、会社も誰が受けているかわからない、さらに特に配慮をしていない会社も多いことなどを挙げるとともに、従業員の不妊治療サポートに取り組んでいる企業の好事例を挙げています。

不妊治療の多くは専門クリニックで行われています。
中でも多くの不妊治療を手掛けている複数のクリニックが共同して、不妊治療と就労に関係した論文を最近2本(1)(2)発表しました。

不妊治療開始時に仕事との両立が難しいと答えた人は1400人中1100人、この方々を対象に調査を行ったところ、6人に1人は結局退職または転職していました。
特に不妊期間が2年以上、非正規雇用、大卒未満の学歴である方々が転職・退職のリスクが高く、逆に会社に支援体制すなわちフレックスタイム制や時短などの制度があることが転職・退職のリスクを減らしました。
重要な社員が辞めずにすむように企業はこういった制度を整備することが求められます。
また不妊に対するハラスメントを受けたことがある人はうつ状態になりやすいということも同じ一連の研究で示されています。

不妊治療に対する否定的な言動はマタニティ・ハラスメントの一種であり、男女雇用機会均等法で明確に禁止されているほか、企業はこれらのことを従業員にも周知させておく義務があります。

(1)https://oem.bmj.com/…/12/02/oemed-2020-106745.full.pdf
(2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/…/404_2020_Article_5923.pdf

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