2018/11/26 投稿

副業時代の労務管理

従業員に会社の仕事以外のバイトや副業を行うことを禁止している企業は多いと思います。
しかし、近年の働き方改革の一環として副業を認める方向に政府主導で強く舵が切られています。

副業を許可する、あるいは副業者を雇うにあたってはいろいろな問題点が未整理で残っています(2018年11月現在)。
本稿では健康管理の観点からみた時の問題点を述べます。

副業の在り方を考えたとき、
①二つ以上の職場で労働者として働く場合
②一つの会社で労働者として働いて、それ以外に個人事業主として働く場合
の二つが考えられます。
①の例としては週に1回別の会社で働くとか、会社が終わった後や土日にコンビニエンスストア等でバイトをするなど。
②の例としては会社が終わったあと、ネット経由でライターとして仕事をもらったり、オンラインショップを開いたりするなどが考えられます。

本業として雇う側としては労働時間の管理や安全配慮の義務の一番問題になろうかと思います。
長時間労働が心身のダメージを与え、病気になるリスクをあげることは確立しています。
①のパターンにおいては本業の方は副業の労働時間や内容を報告させ、本業や健康に障害を受けていないかどうかをきちんと把握することが望まれます。
②のパターンにおいては自営業者として健康を害さないようにすること自体は自己責任だと思います。
ただし、雇われている労働者には自己保健義務がありそれを満たしていない(すなわち本業に支障をきたしているような場合や健康を害しそうな場合)は、会社側から強く禁止の命令を出すかあるいは産業医等に相談ください。

一方副業者を雇う側から見ます。
副業者を雇うにあたっては、本業の職場に許可を受けていることと本業のほうの残業時間を毎月申告していただくことを産業医としてはお勧めしています。
また本業先の定期健康診断結果(これは必ず本人にも渡されます)を提出してもらうことを勧めています。
というのも副業といえども労働者を雇っている以上安全配慮の義務は免れません。
さらに2018年時点では労働時間は通算して考えるというのが主流の考え方であり、しかも残業時間(週40時間の法定労働時間を超えて労働した時間)が月100時間超えてると健康面での弊害が極めて大きいからです。
合計時間が100時間を超えそうなときはその方の業務を減らさざるを得ないことがありえます。

個人的に見た将来の懸念を最後に述べます。
現在、職場が健康診断を受けさせる義務はほかの従業員の3/4以上の時間働く人です。
今後副業がもっと一般的になってくると、複数の会社でパートをやっていてどこも定期健康診断を受けさせない、したがって労働者であるにもかかわらず誰も労働に伴う健康管理の主な責任を取る人がいない労働者が増えてくる可能性があります。

理想的には複数の箇所で働く労働者においては、それぞれの職場の衛生担当者(生成管理者、保健師、産業医等)が密に連絡を取り合い労働者が健康に職業人としての人生を全うできるようにするのが望ましいのです。
ただ現状なかなかそこまで社会の変化に産業衛生界が付いて行けていません。今
後どういう枠組みになるのかはわかりませんが人事や労務の担当者はこのあたりの動向には注意を払う必要があります

厚生労働省のサイト。ガイドラインやモデルとなる就業規則、QandAなどが盛り込まれています(2018年11月24日参照)
副業・兼業|厚生労働省

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