2020/05/15 投稿

出社時の感染対策とテレワークで見えてきた問題点

さて更新が遅くなりました。今回も新型コロナの話です。

現在新型コロナに対して緊急事態宣言が出てからテレワークが急速に、しかも十分な準備なく多くのところではじまっています。
地域によっては緊急事態宣言の解除も始まりますので通勤を再開する方も増えるかと思います。
ここ数か月産業医として私が新型コロナウイルス感染防止という観点から指導していることや、テレワーク(在宅勤務・リモートワーク)で重要と考えていることをお話しします。

 

出社する場合。

まず他人との距離を取りましょう。
おそらく多くの会社において一番危険な場面は他人としゃべるときです。
口から出た微細な飛沫が他人に感染させるというのがメインの感染ルートだろうと考えられているからです。

さらにこの病気は、発症する直前、つまり全く症状が出ていない時こそ最も周りに感染するということが分かってきました。
自分に症状がないからといって、部下を至近距離から説教したり、飲み会で大声でしゃべったりするのは危険です。
いつ何時でも「自分から周りにうつすかもしれない」と思って行動しましょう。

濃厚接触者という概念があります。
最近これに変更がありました。
これによると、

  1. 患者が症状(熱・咳など)の出る2日前までに
  2. 1m以内の距離で
  3. お互いがマスク等をせずに15分以上しゃべったかたは濃厚接触者になる可能性があります。

皆さんは2日前までに15分以上しゃべった相手を覚えていますか?

もし会社内に患者が出た場合、濃厚接触者も14日間の自宅待機が求められます。
他人と会話をするときはマスクをしたうえでなるべく距離を取って話すことを心がけましょう。

特にこのような接触がおきやすい場所が職場には2か所あります。

一つは喫煙所、もう一つは食堂です。
どちらもマスクはしないですし会話が頻繁に行われます。
私が産業医としてアドバイスをする場合、食事はなるべく一人でとること、もし複数でとる場合でも対面には座らずなるべく会話も小声ですることを強く勧めています。
食事中会話をしたくなるのは当然なのですが、できれば食後にマスクをしながらのんびり話しましょう。
また喫煙所に関してもできれば廃止を、不可能であれば屋外の風通しのいい場所に移すことが望ましいです。

さらに事業場の配置が非常に過密である場合も多いです。
なるべく席と席の間隔、特に向かいの席との間隔は取りましょう。
できれば両方から手を伸ばしても触れないくらいの間隔が望ましいと考えています。

またこれから暑くなりますが、換気は極めて大事です。
事業場やそこでの作業内容にもよりますが、クーラーを回しながらでも窓を開けておくことが必要だと考えています。
いったん職場で感染が起きると、発症者は病院等で隔離、濃厚接触者は自宅待機、執務室も閉鎖や消毒等を保健所から求められることがありますので要注意です。

職場の換気状況を簡単にシミュレートする方法が日本産業衛生学会の産業衛生技術部会に載っています。ぜひご参照ください。
日本産業衛生学会 産業衛生技術部会 – 新型コロナウィルス感染予防対策用換気シミュレーター

 

続いてテレワーク(在宅勤務・リモートワーク)の話にうつります。

今回突然テレワークを始めることになったので事業場によっては相当苦労しています。

まもなく大多数の都道府県では緊急事態宣言が解除され、通常通りの勤務が始まると思います。
ただし今回の新型コロナがいったん収まったとしてもこれで終わると思っている医者は少数派で、多くは第二派、第三派が数か月の間隔をおいて襲ってくると考えています。
このため、再度テレワークをしなければいけない事態になる可能性を視野に入れておく必要があります。

私自身テレワークメインの会社を産業医として持つようになったのは初めてですのでいろいろ苦労をしました。
そこでの経験からいくつかヒントになるようなことを得ましたので以下に述べます。

まずはテレワークでオンオフがはっきりしなくなる方が一定数おられます。
起きてすぐ仕事に入れることからぎりぎりまで寝ていたり、就業時間が終わった後も作業をやったりです。
まずは日常と同じルーティーン、つまりひげをそって着替えて、可能ならネクタイや化粧をしてきちんと仕事モードに入ってから仕事をはじめ、終わったら完全に仕事を離れることをお勧めしています。

次にテレワークで運動不足になる方がおられます。
特に「他人との接触を減らしましょう、Stay Home」と言われてから増えたように感じています。
そういう方には私は散歩を勧めています。
誰もいないところを散歩するならば絶対他人と接触することはありません。
そこまでいかなくともなるべく人の少ない時間にきちんと距離を取って1日30分から1時間の散歩時間を取ることがおすすめです。
また最近ではプロのインストラクターがソーシャルメディアを通じて室内運動を指導するサービス等も増えていますので、これらを利用するのもいいでしょう。

腰痛や肩こりで悩まされるようになったという方もいますが、当初私が心配していたほどには増えていない印象です。

不思議なことにテレワークになって逆に調子が良くなる方のほうが多い印象があります。
何がよかったのかを聞いてみると、睡眠時間が確保できる、通勤のストレスから解放されるなどの他、職場の人間関係から少し距離をとれることを挙げる方が多いようです。
また、仕事中でもちょっと体を動かしたり、席を立ってウロウロしながら考えをまとめたり、作業場所を今までの画一的な机から自分に合った環境でおこなったり(立ったままでパソコン作業をするなど)といった、今までのオフィスでは憚られてちょっとできなかった自分好みの行動がとれることが体調改善の要因だと思われる方も結構いらっしゃいました。
テレワークで腰痛等が悪化している方は、このようなやり方を参考に、基本作業環境(机やいすの高さ、明るさなど)を工夫してみるのもいいでしょう。

 

一方でなかなか解決しにくい問題もあります。

例えば上司としては部下の調子が分からなくなるというのが非常に難しいところです。
今までは毎日職場で顔を合わせていたのに対しそれができなくなる、これを心配されている方が非常に多かったです。
毎朝のテレビミーティングで声をかけるとともに心配な方に対して訪問をするくらいしか今のところ解決策は思いついておりません。

一番困っているのは常に家族等がいるために集中できず仕事にならないなどが原因で、家族との仲が悪くなるという問題です。
実際フランスでは児童虐待が3割増えたともききます。
同様のことは日本でも起きているようです。
カフェなどでテレワークを行うという方法もありますが、機密保持の問題や他人との接触の問題等もあり難しいところです。

 

テレワークが解除されるとまた新たな問題は出てくるでしょうし、景気が悪くなり会社の将来性に不安があることが従業員の強いストレス要因であることは周知の事実です。
今後ますます産業保健の働きは重要になると考えております。

 

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