
インフルエンザの8+3ルール
2020年は新型コロナにはじまり新型コロナで暮れようとしています。
例年この時期に産業医はインフルエンザについての講話をしています。
インフルエンザは毎年冬場に流行して多くの患者を出し、時に職場で流行するものだからです。
今年は少し様子が違います。もちろん新型コロナとの関係です。
まずはインフルエンザについて簡単なことをまとめておきましょう
- 主に冬場に生じる呼吸器(のど・鼻など)の感染症である
- 風邪の一種であるが、急な寒気や全身の痛み、39度を超える高熱などが典型的である
- ヒトからヒトにうつるがうつり方は2通り。
1つは症状を出している患者からの飛沫を直接吸い込んだりした場合(飛沫感染)。
もう一つはそういった飛沫が机やドアノブについていてそこに触った手を洗ったり消毒しないまま自分の鼻や口の粘膜に触ってしまった場合(接触感染) - インフルエンザにはワクチンがあるが効果は100%ではない。
誰もワクチンを打ってなかった場合大体一冬で100人中10人くらいがインフルエンザにかかると思ってください。ワクチンを打っているとそれが5人くらいに減る。つまりほとんどの人は打っても打たなくてもインフルエンザにはならないし、逆に打ったのになる人もいるということ - 若い人~壮年層で持病がない場合インフルエンザが直接命にかかわることは非常にまれである。インフルエンザ関係で亡くなる典型は高齢者がインフルエンザにかかって、肺がダメージを受け、そこに別な細菌が入って肺炎をおこして死に至るというものです
- 治ってしまえば通常後遺症はない
これを新型コロナと比べてみます。
- 新型コロナはどうも冬に限らず1年中流行しているようです
- 症状については色々なことが言われておりインフルエンザと区別のつかないパターンもありますが、若年層ではほとんど症状がないこともあります。また味やにおいがわからなくなることが非常に多いと言われています
- 流行の仕方はほぼ一緒と考えてもらっていいでしょう
- ワクチンは世界中がこぞって開発していますが今のところありません
- 新型コロナで若い人が亡くなるのはまれですが、50歳代くらいになるとかかった場合無視できない程度の命の危険があります
- 後遺症の頻度も高く(倦怠感や息苦しさなど)、また長く続く方が結構多いようである
この季節に高熱が出ると新型コロナかインフルエンザかの区別がつかないことが多いと予想されるため、治療が遅れないように、また医療機関の負担を減らすためにもインフルエンザのワクチンを打つことが推奨されています。
さてここで考えるべきことが二つあります。
一点目。
インフルエンザのワクチンの生産量はその年の春くらいには決まってしまっています。
しかも今年医者が打て打てと勧めているので(私も勧めています)品薄になることが予想されます。
二点目。
新型コロナと予防法がほぼ変わらないため、生活様式が代わった現在インフルエンザの流行は小規模である可能性があります。
実際オーストラリアでは毎年7月ごろ(南半球ではその頃が冬です)インフルエンザが流行るのですが、今年に限ってはほぼ無視できる程度の流行でした。
この辺りのバランスがどうなるかがわからないというのが私見です。
東京の場合東京都感染症情報センターのページで毎週のインフルエンザの流行情報がチェックできるため定期的に確認しましょう。
ではインフルエンザと診断された方に対して会社としてはどうすればいいのでしょうか。
学校保健法という法律ではインフルエンザと診断されたら症状が出てから5日間つまり120時間、症状が治まってから最低2日間つまり48時間は出席しないことが求められています。
ところが社会人には法的なルールはありません。
ただ上記の法律に準じた休みを原則としているところも多いです。
この冬はインフルエンザと診断されたら実は新型コロナだったという事態なども予想されるため理想的には8+3ルールが可能であればそれを原則とすることを企業にはおすすめしています。
8+3ルールというのは症状が出現してから8日間、消失してから3日間は会社に出てこないこと(症状が軽ければテレワークは構わないと思います)で、2020年5月の経団連のガイドラインにも又引きという形で引用されています。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/040_guideline1.html
ただ、ほとんどの小規模な会社では8日間も従業員を休ませる余裕はないので難しいところではあります。
どういう健康施策を取ったにせよ、不十分だったりかえって裏目に出ることはあります。
産業医等と相談の上、覚悟を決めて断行、そして新たな科学的知見が出てきたら速やかに変更することが大切だと思っています。
産業医をお探しの方は
お気軽にお問い合わせ
ください。
今なら「介護と仕事の両立を支援するガイドブック」を無料でプレゼント!